あんなに碧かった宮古島があっという間に灰色の渦に飲み込まれ、固定されていないものは何もかもが瞬く間に数十メートルにも先に吹き飛ばされてしまうほど強い風が吹き荒れて、私たちはこの「楽園」で丸2日間家に閉じこもらなければならないという選択を余儀なくされた。
「物資を運ぶ船が台風で欠航になると食糧不足になる」という情報を聞きつけてスーパーに駆け込むも、時すでに遅し。日持ちするカップラーメンや飲料水の棚にはペットボトルの6本パックを包んでいたであろうビニールや商品が入っていたであろう空き箱などの残骸が残されているくらいで、本当に空っぽだった。
それでも何軒か回ってやっとみつけた戦利品。
東京に比べると家の造りも、電柱の電線も、水道管も何もかもが頼りない。美しい島に生活する住人の、「楽」と隣り合わせにある苦の側面を少し垣間見た気がした。
風がゴンゴンと雨戸を叩く音が強まるたびに、家が崩壊しはしないかと寝るにも寝られず、テレビの音声のない台風情報の明かりが部屋の中をチカチカと一晩中照らしていた。