ひとつぶ ひとつぶ

ヨーロッパ在住。旅行ブログ

ラーメン

一蘭ラーメンの自販機

高校生の時福岡に住んでいた私にとってラーメンはもっと身近なものだった。そして、もちろん味噌でも醤油でもなく、とんこつラーメンの一択だった。

部活帰りにもラーメン、家の近所の、のちにカップラーメンにもなったらしい某有名ラーメン屋からの豚骨スープの匂いは店の煙突から1日とも絶えず町内に漂い、土日のバイパス沿いにあった大型ラーメン屋のお座敷席は子連れの家族客でいつも賑わいを見せていた。各テーブルの高菜と紅生姜は言うまでもなく、その店のカウンターには箱があって、その中には「お好きなだけお入れください」といわんばかりの皮を剥かれたニンニクがゴロゴロと入っていて、ニンニククラッシャーと一緒に置かれていたっけ。

東京に出てからのラーメンといえば、クラブの後の締めにと食べた夜明けのみそラーメンや、パートナーとなんだかお腹が空いて簡易な服装にジャケットを羽織って食べに行った深夜のラーメンが懐かしい。寝静まった住宅街のその店からこぼれる黄色い光は暗い夜道をそこだけ明るくしていた。暖簾をくぐればそこは別世界で、「いらっしゃい!」と活気ある店員さんの声が連呼して、罪悪感を感じながら食べた太麺に角煮なみ厚切りのチャーシューが載ったこってりめの醤油ラーメンはやたらおいしくて、楽しい至福の時間だった。

そして今、外国の中規模都市に住む私にとってラーメンはもはや贅沢品。ちょっとした特別な日に友人と時間をかけて食べるものとなっている。ご想像のとおり、終盤あたりで麺は伸び切ってしまって残念なことになっているのだが、それも楽しい会話が弾んだ証で、ラーメンの新しいカタチなのだと思う。