ひとつぶ ひとつぶ

ヨーロッパ在住。旅行ブログ

下北沢と時間

Trip to the Heaven

昔は出口が北と南の二つしかなかったその駅も、何もかもがまっ白でピカピカに新調されて、降りたってみれば「全く知らない場所」だった。何一つ面影すら、ない。

 

ライブハウス、おじさんとおばさんがいつも笑顔で迎え入れてくれたチーズとんかつのうまい定食、よくイタリアのパスタやトマト缶を安売りしていた輸入食品専門店、通いつめた銭湯、カウンター席で鳥のどの部位も余すことなくおいしく提供してくれて狭い店内がいつもぎゅうぎゅうに混み合っていた焼き鳥屋さん、屋上にあって友達と夏にビール片手に生春巻きを頬張ったアジアレストラン。私は昔そこに住んでいた。

 

Shimokitazawa

記憶は色褪せずに今でも鮮明に匂いすら思い起こすことができるのに、時間は私たちを乗せて次の停車駅へ向かう。

 

時間は戻らない。時間は止まらない。でも、各停や急行とどれに乗るかを決めるのは私たちで、ドアを無理やりこじ開けて下車して、「徒歩」を選択することもきっと可能だ。